います。私の望むことは、社会がこれらの三女史に対する従来の冷淡な待遇を改めて、出来るだけ三女史のために、その能力を僻《ひが》まず、枉《ま》げず、自由に発揮することの出来る機会を与え、社会もまた出来るだけ三女史の意見に聞いてそれを利用して欲しいと思うことです。三女史の自己主張のためには勿論、社会の幸福に資する人物経済の上からもこれを望まねばなりません。この意味から、たとい私の書いた物は粗末であっても、偶※[#二の字点、1−2−22]三女史の識見を引出して社会の耳目を集める機縁を一つ殖《ふや》したことについて自ら喜ぼうと思います。
 無名氏の手紙は、私が今、三女史の包囲攻撃の中に陥っていることを気附かずにいるかと言って注意されました。如何にも私は自分を論争の十字火の下に暴露して立っていることを認めます。私は論争を好まない者です。また論争に習わない者です。けれども必要のための論争は辞すべきものでないと思っています。三女史に対して捧げている前述のような尊敬は尊敬として、たとい三女史の博詞宏弁を以てしても私の意見の自信を覆《くつが》えさない限り、私はその十字火を凌《しの》いで三女史の前にこの細小
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