たる山少女《やまをとめ》湖《うみ》ぞひゆけば家をしへける
春の月縁《ゑん》の揚戸《あげど》の重からば逢はで帰らむ歌うたへ君
あくどしや少し恋しとなす人を撓《たゆ》まず寝《い》ねず思ふと云ひぬ
日は暮れぬ海の上にはむらさきの菖蒲《あやめ》に似たる夕雲のして
たなばたや簾《すだれ》の外《と》なる香炉《かうろう》のけぶりのうへの天の河かな
妹《いも》が間は床の瑪瑙《めなう》の水盤にべにばす咲きぬ七月|七日《しちにち》
ただふたり海の岩草花しろき夜あけに乗りぬ上総《かづさ》の船に
摘みすてし野薔薇ながれぬ夕川の橋の柱にただよひつつも
公孫樹《こうそんじゆ》黄にして立つにふためきて野の霧くだる秋の夕暮
ほととぎす安房下総《あはしもふさ》の海上に七人《ななたり》ききぬ少女子《をとめご》まじり
ゆゑしらずわが病むらしの時わかぬ脈うつ手とり死なむと云ふや
ちぬの浦いさな寄るなるをちかたはひねもす霞《かす》む海恋しけれ
春の里舞ぎぬほさぬ雨の日の柳は白き馬をつながむ
君かへらぬこの家《や》ひと夜に寺とせよ紅梅どもは根こじて放《はふ》れ
かきつばた白と紫くまなして流るる水に鯉の
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