をとめ》
五月雨《さつきあめ》春が堕《お》ちたる幽暗の世界のさまに降りつづきけり
春の夜や聖母聖なり人の子の凡慮知らじと盗みに来しや
野社《のやしろ》や榛《はん》の木折れて晩秋の来しと銀杏《いてふ》の葉に吹かれ居る
君にをしふなわすれ草の種まきに来よと云ひなばおどろきて来む
京の衆《しゆ》に初音まゐろと家ごとにうぐひす飼ひぬ愛宕《をたぎ》の郡《こほり》
知恩院《ちおゐん》の鐘が覚《さ》まさぬ人さめぬ扇もとむるわが衣《きぬ》ずれに
あやまちは君を牡丹とのみいはで花に似し子をかぞへけるかな
君は死にき旅にやりきとまろ寝しぬうしろの人よものないひそね
初夏のわか葉のかげによき香する煙草《たばこ》をのむをよろこぶ人と
春そよと風ふく朝はおん墓に桜ちらむとなつかしき父
おもはぬを罪と知る日の君おもひ涙ながれてはてなき日なり
わが知らぬわれ恋ふる子のおもひ寝の来しとゆかしむ琴ききし夢
鳴滝《なるたき》や庭なめらかに椿ちる伯母の御寺のうぐひすのこゑ
六月《みなつき》のおなじ夕に簾《すだれ》しぬ娘かしづく絹屋と木屋と
大堰川《おほゐがは》山は雄松《をまつ》の紺青《こんじや
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