わかやかに青葦《あをあし》ふきぬ初夏の風
あつき日の流《ながれ》に姉と髪あらひなでしこさして夕を待ちぬ
岸に立つ袖ふきかへしもみうらの紅《あけ》を点じてゆくや河かぜ
目に青き穂麦の中にももいろのひくき靄《もや》する花畑かな
おほかたを人とおもはず我|猛《だけ》くなりにけらしな忘られし君
くちびると両手に十の細指はわれの領なる花なれば吸ふ
ふるさとを多く夢みぬ兄嫁の美くしきをば思ふと無きに
彼《か》の天《あめ》をあくがれ人は雲を見てつれな顔しぬ我に足らじか
帆織る戸へ信天翁《おきのたいふ》を荷《にな》ひ入る人めづらしや初冬の磯
紅梅に幔幕《まんまく》ひかせ見たまひぬ白尾の鶏《かけ》の九つの雛
しら梅や二百六十|二人《ふたたり》は女王《によわう》にいます王禄の庭
花に似し人を載せたる唐船《たうせん》に大君ふきぬ春の山かぜ
男こそうれしと見ぬれいかがせむあらぬ名着たる大難の日に
舞姫のかたちと誉めよむかしの絵そへ髪たかく結ひたる人を
春の雨障子のをちに河暮れて灯に見る君となりにけるかな
ほととぎす戸をくる袖の友染に松の月夜のつづく住の江
人妻は高き名えたる黒髪
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