よき朝に君を見たりきよき宵におん手とりしと童泣《わらはなき》すも
まくら二尺さりて水ゆくあづま屋に螢こよなうもてはやす人
舞の手を師のほめたりと紺暖簾《こんのれん》入りて母見し日もわすれめや
あけがたの鶯ききし空耳の君がまた寝を難じて居たり
わが肩にいとやごとなき髪おちてやがて捲《ま》かれて消し春の夢
君に似しさなりかしこき二心《にしん》こそ月を生みけめ日をつくりけめ
この恋君《こひぎみ》うらみたまへどそひぶしの寝物語もさまよきほどに
野ゆく君花に聴かずや語部《かたりべ》も伝へずありし幾ものがたり
おもはれぬ人のすさびは夜の二時に黒髪すきぬ山ほととぎす
月の夜をさそへど出でずこほろぎを待つと云ふなるとなり人かな
春の月おとうとふたり笛ふいて上ゆく岡を母とながめぬ
きぬぎぬや春の村びとまださめぬ水をわたりし河下の橋
春の朝われ黒髪にたきものす鶯まゐれ目ざめし人に
炉にむかひ鼓あぶりてものいふを少女と誉めぬわれいつく母
君が妻はなでしこ※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]して月の夜に鮎の籠あむ玉川の里
夕ぐれのさびしき池を
前へ
次へ
全22ページ中20ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
与謝野 晶子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング