ひな》の鶯の啼《な》く
二もとの橄欖《かんらん》しげる琅※[#「王+干」、第3水準1−87−83]《らうかん》の亭の四方を船かよひけり
春の山|懸樋《かけひ》の水のとまりしを昨夜《よべ》の狐とにくみたまひぬ
遠つあふみ大河《たいが》ながるる国なかば菜の花さきぬ富士をあなたに
軒ちかき御座《みざ》よ火《ほ》の気《け》と月光のなかにいざよふ夜の黒髪
松かげの藤ちる雨に山越えて夏花使《なつばなづかひ》野を馳《は》すらむか
廻廊を西へならびぬ騎者たちの三十人は赤丹《あかに》の頬《ほ》して
きぬぎぬや雪の傘する舞ごろもうしろで見よと橋こえてきぬ
高き家《や》に君とのぼれば春の国河|遠白《とほじろ》し朝の鐘なる
長雨や出水《でみづ》の国の人なかば集《つど》へる山に法華経《ほけきやう》よみぬ
夕《ゆふべ》にはちるべき花と見て過ぎぬ親もたぬ子の薄道心《うすだうしん》に
淡色《うすいろ》の牡丹今日ちる時とせず厄日《やくび》と泣きぬ病《や》み僻《ひが》む人
保津川《ほづがは》の水に沿ふなる女松山《めまつやま》幹むらさきに東明《しののめ》するも
萌野《もえの》ゆき紫野ゆく行人《かう
前へ
次へ
全22ページ中3ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
与謝野 晶子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング