巴里の旅窓より
與謝野晶子

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)意氣《いき》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)皆|葺《ふ》いてある

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)各※[#二の字点、1−2−22]
−−

 汽車で露西亞や獨逸を過ぎて巴里へ來ると、先づ目に着くのは佛蘭西の男も女もきやしやな體をして其姿の意氣《いき》な事である。勿論一人一人を仔細に觀るなら各※[#二の字点、1−2−22]の身分や趣味が異ふ儘に優劣はあらうが、概して瀟洒《あつさり》と都雅《みやび》であることは他國人の及ぶ所で無からう。佛蘭西の女と云へば、其れが餘りに容易く目に附くので、どの珈琲店にも、どの酒場にも、どの路上にも徘徊する多數の遊女が代表して居る樣に一寸思はれるけれど、自分は矢張りコメデイ・フランセエズの樣な一流の劇場の客間《サロン》に夜會服の裾を引いて歩く貴婦人を標準として、其れに中流の生活をして居る素人の婦人の大多數を合せて佛蘭西の女の趣味を考へたい。目
次へ
全12ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
与謝野 晶子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング