が全部で無くても、大部分は古代藝術の自然の影響と、又意識して採擇した結果とであらうと想はれる。殊に女優の形と云ふものは希臘や伊太利の古美術に現はれた人體の美しい形を細密に亙つて研究して居るらしいから、其女優の形が上中流の婦人社會に影響するのは當然であらう。
自分が佛蘭西の婦人の姿に感服する一つは、流行を追ひながら而も流行の中から自分の趣味を標準にして、自分の容色に調和した色彩や形を選んで用ひ、一概に盲從して居ない事である。自分は三四着の洋服を作らす參考にと思つて目に觸れる女の服裝に注意して見たが、色の配合から釦《ブトン》の附け方まで同じだと云ふ物を一度も見たことが無い。仕立屋《タイユウル》へ行けば流行の形の見本を幾つも見せる。誂《あつら》へる女は決して其見本に盲從する事なく、其れを參考として更に自分の創意に成る或物を加へて自分に適した服を作らせるのである。
又感服した一つは、身に過ぎた華奢《くわしや》を欲しない儉素な性質の佛蘭西婦人は、概して費用の掛らぬ材料を用ひて、見た目に美しい結果を收めようとする用意が著しい。此點は京都の女と似通つた所がある。富んだ女が絹を用ひる所を麻で濟ま
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