非人道的な講和条件
与謝野晶子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)背《そむ》いている
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)のびのびし[#「のびのびし」に傍点]た
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政治家や実業家は便宜主義を重んじる習慣の中に生きています。便宜主義は一時的のものです。それが必ずしも正義と一致して永久の価値を持っているとは限りません。否、むしろ正義に背《そむ》いている場合の多いのが便宜主義の特色です。
現代では、便宜主義の習慣から解放されていると否とで、真の政治家であるか、真の実業家であるか否かが判断されます。目前の功利さえ挙げれば、その行為が道理に合っても合わないでも構わないという態度は時代遅れです。
政界や実業界には、こういう時代遅れの態度を持った人たちがまだ全く勢力を占めています。彼らは個人的にも国家的にも、唯だ利己主義的な欲望さえ満足すれば好いので、それ以上の高遠な理想を持っていませんから、正義は要するに鬼の空《から》念仏であって、実際に利己主義を貫徹するためには、如何なる厚顔無恥な手段をも採り、正義に対する反省も、自己の食言《し
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