子様方を可愛がりはりますので、ようおまへんと心配でな。』
[#ここで字下げ終わり]
とも云つた。江南さんの秋子さんが千代紙を持つて来て下すつた。秋子さんと一緒に昨日別家から貰つて来た焼かまぼこと吸物で昼の食事をした。熊七は風呂場の傍の三畳に入つて此処で結構だと云つて茶の間の火鉢の処へも出て来ない。佐藤さんの人形を秋子さんに見せて居たが、顔が生田さんの奥さんに似て居ることに気が附いた。二時半になつたからお帰りになる秋子さんと一緒に一番町の通まで光と秀の帰つて来るのを迎へに行つた。坂を上つてくる帽の上から見てよく似た子は七八人も違つた子で、やつと後に讓さんと三人連れでわたしの子は坂を上つて来た。
『母さんが居ますよ。』
と珍しさうにも思はない声で秀が兄に知らせて居た。秋子さんと別れた。
『お父さんはもう行つてしまつたの。』
と云ふのを初めにいろいろの質問を私の小い友達はする。船中の事ばかりで京や大阪やわたしの古郷の事などは聞いて呉れさうにもない。
『熊七。』
と大きい声で云つてやつて御覧と道を歩きながらわたしが云つた時光は受合つて居ながら、家へ入ると耻しくなつたと見えて、それで居て云はない
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