れた自然の中に居る自分ではないかと作者は思つたのである。
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美くしき心を空に書きたれば明星は打つ金《きん》のピリウド
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自分は夕方の大空を見て清い恋を思つて居た。美くしい言葉にして其れを青色の広い広い紙にも書く自分であつた。この時に出て来た明星は自分の文章に黄金《きん》色の句点を打つたと云ふ歌。
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わが額《ぬか》を鞭《むち》もて打つは誰がわざぞ見覚めて見れば手の上の書《ふみ》
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ぴしりと自分の前額を打つ者があつた。誰れからこの咎《とが》めを受けたのであるかと目を醒《さま》して考へて見ると、其れは手の上に置いた書物から受けた譴責であつたと云ふのである。作者は全く眠つて居たのではない。夢を見て居たのでもない。瞑目して暫時自己を忘卻して居たのも、既にこの良き書から発せられた警告の為めであつた。是れに接するまでの愚かな自分を鞭打ちたく思つたのはもとより作者自身であつた。
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大いなる傘に受くれば一しきり跳《をど》れる雨も快きかな
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