ふくいく》たる香を湛へて名利の外にある恋だけはよく自分を安らかならしめるであらうとかう定めて居ると云ふ意。
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辻に立ち電車の旗を振る人もいしく振る日は楽しからまし
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これはまだ交通の信号燈などの出来なかつた時代の東京の街上風景に得た感想である。水道橋とか、神保町とかの四つ角に立ち青旗、赤旗を振つて居る人は、みじめな仕事をして居ながらも旗の振りやうが思ひ通りに巧みに出来た場合は、自分等に良き創作の出来た時と変らない満足感があるであらうと云ふのであつて、高村光太郎氏の歌に屋後切《やじりきり》が巧みに門戸の閉りを切つた跡を見ると、是れも芸術であると云ふやうな気がされると云ふのがあつたのは、彫刻の刀を取られる同氏の作であるだけ、さうした巧みな物があつたのに誰れも気附かぬ美を発見して教へられたものとして私は記憶して居るが、是れは創作の楽みが其処に認められると歌はれて居るのである。
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女みな流星よりもはかなげにわが世《よ》の介《すけ》の目を過ぎにけん
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西鶴の好色一代男の主人公(
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