心としたやや狭い意味。
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止まりたる柱時計を巻きながらふと思ふこと天を蔑《な》みせり
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 今まで止まつて居た柱の時計の螺旋《ねじ》を巻きながらふと自分は大それた事を思つた。其れは自然の則も無視することの出来るやうな力が自分の内に充満してゐることを信じたのであつた。つまり時の流れなどは何んでもないのであると云ふやうな思ひがしたのである。
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沈黙《ちんもく》を氷とすれば我があるは今いと寒き高嶺《たかね》ならまし
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 無言で居る境地を氷に譬《たと》へるならば、今自分が居る所は氷雪に満ちた寒い高山の絶頂と云ふべきであると云つて、暗に認識不足な世間に対して、云ふべきを云はず黙して立つ者は、骨も削づられるばかりの冷寒の苦を味はつて居るのを云つて居るのであらう。
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自らを恋に置くなりしら玉よ香る手箱にあれと云ひつつ
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 今や自分は恋愛三昧の人である。白玉にも譬《たと》へたい自分の置場を、他の傷つき易い所に置きたくないからで馥郁《
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