青ざめて物思ふこと人よりも多きに過ぐるたそがれの薔薇
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自分等などよりも物思ひを多くする風に青ざめた顔の白薔薇の花であると、夕明りももう暗くなりかかつた空の下で見たと云ふのであるが、物思ひを多くするらしいと見られてもなほ美を損《そこな》はぬ程度の花であつて、人はまた恋に痩せながらも更らに其れよりも幸福なやうに思はれる。
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浮びたる芥《あくた》の中に一筋の船のあとあるたそがれの川
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都の中の川らしい、川一面と云ふのでないが、作者の目の行つた所には相当に広く芥がひろがつて水を被《おほ》ふて居た。その中に一筋の道が出来てゐるのは、船が行つた跡なのであると云つてあるが、船が作つて行つた道がいかに美くしい水の色をしてゐたか、其れは彼方の川上にも川下にも見出せないやうな清い光をなしてゐたであらう。醜い芥はつつましく身を両側へ退けてゐたに違ひない。
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ねがはくは若き木花咲耶姫《このはなさくやひめ》わが心をも花にしたまへ
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或る音楽者が短歌の作曲をして見たい
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