私たちはこの辛うじて開かれている唯一の窓を利用して、此処《ここ》から出来るだけ政治その他の生活機関に対する私たち婦人の希望を述べねばなりません。こういう自覚から私はこの感想をも書こうと思います。
 第三十八議会は予想の通りに解散となりました。官僚と党人との政争の外に立っている私たち婦人は、いまさら衆議院の提出した内閣不信任案の是非や、それに応戦して寺内内閣の奏請した解散の不法であるか否かを顧みるようなことに多くの必要も深い興味も持つことが出来ません。むしろこの解散を機会に官僚も党人も国民全体も過去の政争的関係をすべて一擲《いってき》して、立憲国の代議政治の根本精神に立ち返り、世界の大勢と国家の現状とに考えて日本人全体の生活を一層合理的にし、一層幸福にするように努力して欲しいと思います。
 しかるに寺内首相と後藤内相とが地方官会議の席上でなされた演説を見ると、私たちのこの希望を裏切って、これまでの陰険醜悪な政争の上に更に一層|頑冥《がんめい》の政争を重ねようとする志向が顕著に見えております。失礼な申分ですが、男子というものは太古以来聡明を以て自任している割に、一旦衆を恃《たの》むと、どう
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