》めり、
きしきしと音するは
鑿《のみ》とりて像を彫《きざ》む人
夜《よ》も寝ぬが如《ごと》し。
またその妻と踊りては
廻るひびき
競馬の勢《きほひ》あり。
わが物書く上に
屋根裏の砂ぼこり
はらはらと散るも
彼等いかで知らん。
されど我は思ふ、
我は鼠《ねずみ》と共に栖《す》めるなり、
彼等に食ひ物あれ、
よき温かき巣あれ、
天井に孔《あな》をも開《あ》けて
折折《をりをり》に我を覗《のぞ》けよ。


    賀川豐彦さん

わが心、程《ほど》を踰《こ》えて
高ぶり、他《た》を凌《しの》ぐ時、
何時《いつ》も何時《いつ》も君を憶《おも》ふ。

わが心、消えなんばかり
はかなげに滅入《めい》れば、また
何時《いつ》も何時《いつ》も君を憶《おも》ふ。

つつましく、謙《へりくだ》り、
しかも命と身を投げ出《い》だして
人と真理の愛に強き君、
ああ我が賀川|豐彦《とよひこ》の君。


    人に答へて

時として独《ひとり》を守る。
時として皆と親《したし》む。
おほかたは険《けは》しき方《かた》に
先《ま》づ行《ゆ》きて命傷つく。
こしかたも是《こ》れ、
行《ゆ》く末《すゑ》も是《こ》
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