がた。

しかも威《ゐ》のあるA《エエ》の字は
埃及《エヂプト》の野の朝ゆふに
雲の間《あひだ》の日を浴びて
はるかに光る金字塔《ピラミツド》[#ルビの「ピラミツド」は底本では「ピラミツト」]。

そして折折《をりをり》A《エエ》の字は
道化役者のピエロオの
赤い尖《とが》つた帽となり、
わたしの前に踊り出す。


    蟻の歌
[#地から4字上げ](少年雑誌のために)

蟻《あり》よ、蟻《あり》よ、
黒い沢山《たくさん》の蟻《あり》よ、
お前さん達の行列を見ると、
8《はち》、8《はち》、8《はち》、8《はち》、
8《はち》、8《はち》、8《はち》、8《はち》……
幾万と並んだ
8《はち》の字の生きた鎖が動く。

蟻《あり》よ、蟻《あり》よ、
そんなに並んで何処《どこ》へ行《ゆ》く。
行軍《かうぐん》か、
運動会か、
二千メエトル競走か、
それとも遠いブラジルへ
移住して行《ゆ》く一隊か。

蟻《あり》よ、蟻《あり》よ、
繊弱《かよわ》な体で
なんと云《い》ふ活撥《くわつぱつ》なことだ。
全身を太陽に暴露《さら》して、
疲れもせず、
怠《なま》けもせず、
さつさ、さつさと進んで行《
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