ほゝゑ》みて、
いつまでも童顔、
年《とし》四十《しじふ》となり給《たま》へども。
年《とし》四十《しじふ》となり給《たま》へども、
若き人、
みづみづしき人、
初秋《はつあき》の陽光を全身に受けて、
人生の真紅《しんく》の木《こ》の実
そのものと見ゆる人。
友は何処《いづこ》に行《い》く、
猶《なほ》も猶《なほ》も高きへ、広きへ、
胸張りて、踏みしめて行《い》く。
われはその足音に聞き入《い》り、
その行方《ゆくへ》を見守る。
科学者にして詩人、
他《た》に幾倍する友の欲の
重《おも》りかに華やげるかな。
同じ世に生れて
相知れること二十年、
友の見る世界の片端に
我も曾《かつ》て触れにき。
さは云《い》へど、今はわれ
今はわれ漸《やうや》くに寂《さび》し。
譬《たと》ふれば我心《わがこゝろ》は
薄墨いろの桜、
唯《た》だ時として
雛罌粟《ひなげし》の夢を見るのみ。
羨《うらや》まし、
友は童顔、
いつまでも童顔、
今日《けふ》逢《あ》へば、いみじき
気高《けだか》ささへも添ひ給《たま》へる。
母ごころ
金糸雀《カナリア》の雛《ひな》を飼ふよりは
我子《わがこ》
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