壁
バビロン人の築きたる
雲間《くもま》の塔は笑ふべし、
それにまさりて呪《のろ》はしき
巨大の塔は此処《ここ》にあり。
千億の石を積み上げて、
横は世界を巻きて展《の》び、
劔《つるぎ》を植ゑし頂《いたゞき》は
空わたる日を遮《さへぎ》りぬ。
何《なに》する壁ぞ、その内に
今日《けふ》を劃《しき》りて、人のため、
ひろびろしたる明日《あす》の日の
目路《めぢ》に入《い》るをば防ぎたり。
壁の下《もと》には万年の
小暗《をぐら》き蔭《かげ》の重《かさ》なれば、
病むが如《ごと》くに青ざめて
人は力を失ひぬ。
曇りたる目の見難《みがた》さに
行《ゆ》く方《かた》知らず泣くもあり、
羊の如《ごと》く押し合ひて
血を流しつつ死ぬもあり。
ああ人皆よ、何《なに》ゆゑに
古代の壁を出《い》でざるや、
永久《とは》の苦痛に泣きながら
猶《なほ》その壁を頼めるや。
をりをり強き人ありて
怒《いか》りて鉄の槌《つち》を振り、
つれなき壁の一隅《ひとすみ》を
崩さんとして穿《うが》てども、
衆を協《あは》せし[#「協せし」は底本では「恊せし」]凡夫《ぼんぷ》等は
彼《か》れを捕《とら
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