の好きな人達は
衰へたとも伝へよう。
何《な》んとでも言へ……とは思つてみるが、
それではわたしの気が済まぬ。
風の夜
をりをりに気が附《つ》くと、
屋外《そと》には嵐《あらし》……
戸が寒相《さむさう》にわななき、
垣と軒《のき》がきしめく……
どこかで幽《かす》かに鳴る二点警鐘《ふたつばん》……
子供等を寝かせたのは
もう昨日《きのふ》のことのやうである。
狭い書斎の灯《ひ》の下《もと》で
良人《をつと》は黙つて物を読み、
わたしも黙つて筆を執《と》る。
きり……きり……きり……きり……
何《なに》かしら、冴《さ》えた低い音が、
ふと聞《きこ》えて途切《とぎ》れた……
きり……きり……きり……きり……
あら、また途切《とぎ》れた……
嵐《あらし》の音にも紛れず、
直《す》ぐ私の後ろでするやうに、
今したあの音は、
臆病《おくびやう》な、低い、そして真剣な音だ……
命のある者の立てる快い音だ……
或《あ》る直覚が私に閃《ひらめ》く……鋼鉄質の其《その》音……
私は小さな声で云《い》つた、
「あなた、何《なに》か音がしますのね」
良人《をつと》は黙つてうなづいた
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