》の魚《さかな》が。
けれど、鉤《はり》を離すと、直《す》ぐ、
どの魚《うを》もみんな死《あが》つてしまふ。
わたしの釣らうとするのは
こんなんぢやない、決して。
わたしは知つてゐる、わたしの船が
だんだんと沖へ流れてゆくことを、
そして海がだんだんと
深く険《けは》しくなつてゆくことを。
そして、わたしの欲《ほ》しいと思ふ
不思議な命の魚《うを》は
どうやら、わたしの糸のとどかない
底の底を泳いでゐる。
わたしは夜明《よあけ》までに
是非とも其魚《そのうを》が釣りたい。
もう糸では間《ま》に合はぬ、
わたしは身を跳《をど》らして掴《つか》まう。
あれ、見知らぬ船が通る……
わたしは慄《おのゝ》く……
もしや、あの船が先《さ》きに
底の人魚を釣つたのぢやないか。
灰色の一路
ああ我等は貧し。
貧しきは
身に病《やまひ》ある人の如《ごと》く、
隠れし罪ある人の如《ごと》く、
また遠く流浪《るろう》する人の如《ごと》く、
常に怖《おび》え、
常に安《やす》からず、
常に心寒《こゝろさむ》し。
また、貧しきは
常に身を卑《ひく》くし、
常に力を売り、
常に他人と物の
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