どこ》にあるか。
お前は娘として
その華麗な服装に匹敵する
どんなに気高《けだか》い愛を持ち、
どんなに聡明《そうめい》な思想を持つて、
世界の青年男子に尊敬され得《う》るか。
お前は妻として
どれだけ良人《をつと》の職業を理解し、
どれだけ其《そ》れを助成したか。
お前は良人《をつと》の伴侶《はんりよ》として
対等に何《なん》の問題を語り得《う》るか。
お前は一日の糧《かて》を買ふ代《しろ》をさへ
自分の勤労で酬《むく》いられた事があるか。
お前は母として
自分の子供に何《なに》を教へたか。
お前からでなくては与へられない程の
立派な精神的な何物《なにもの》かを
少しでも自分の子供に吹き込んだか。
お前は第一母たる真の責任を知つてゐるか。
ああ、わたしは是《こ》れを考へる、
さうして戦慄《せんりつ》する。
憎むべく、咀《のろ》ふべく、憐《あはれ》むべく、
愧《は》づべき女よ、わたし自身よ、
女は掠奪者、その遊惰性《いうだせい》と
依頼性とのために、
父、兄弟、良人《をつと》の力を盗み、
可愛《かは》いい我子《わがこ》の肉をさへ食《は》むのである。
わたしは三越《みつこし》や白木屋《しろきや》の中の
華やかな光景を好く。
わたしは不安も恐怖も無しに
再び「美」の神を愛したいと願ふ。
しかし、それは勇気を要する。
わたしは男に依《よ》る寄生状態から脱して、
わたしの魂《たましひ》と両手を
わたし自身の血で浄《きよ》めた後《のち》である。
わたしは先《ま》づ働かう、
わたしは一切の女に裏切る、
わたしは掠奪者の名から脱《のが》れよう。
女よ、わたし自身よ、
お前は一村《いつそん》、一市、一国の文化に
直接なにの貢献があるか。
大百貨店の売出《うりだ》しに
お前は特権ある者の如《ごと》く、
その矮《ひく》い、蒼白《そうはく》なからだを、
最上最貴の
有勲者《いうくんしや》として飾らうとする。
ああ、男の法外な寛容、
ああ、女の法外な僭越《せんえつ》。
[#地から4字上げ](一九一八年作)
冷たい夕飯
ああ、ああ、どうなつて行《い》くのでせう、
智慧も工夫も尽きました。
それが僅《わづ》かなおあしでありながら、
融通の附《つ》かないと云《い》ふことが
こんなに大きく私達を苦《くるし》めます。
正《たゞ》しく受取る物が
本屋の不景気から受取れずに、
幾月《いくつき》も苦しい遣繰《やりくり》や
恥を忘れた借りを重ねて、
ああ、たうとう行《ゆ》きづまりました。
人は私達の表面《うはべ》を見て、
くらしむきが下手《へた》だと云《い》ふでせう。
もちろん、下手《へた》に違ひありません、
でも、これ以上に働くことが
私達に出来るでせうか。
また働きに対する報酬の齟齬《そご》を
これ以下に忍ばねばならないと云《い》ふことが
怖《おそ》ろしい禍《わざはひ》でないでせうか。
少なくとも、私達の大勢の家族が
避け得られることでせうか。
今日《けふ》は勿論《もちろん》家賃を払ひませなんだ、
その外《ほか》の払ひには
二月《ふたつき》まへ、三月《みつき》まへからの借りが
義理わるく溜《たま》つてゐるのです。
それを延ばす言葉も
今までは当てがあつて云《い》つたことが
已《や》むを得ず嘘《うそ》になつたのでした。
しかし、今日《けふ》こそは、
嘘《うそ》になると知つて嘘《うそ》を云《い》ひました。
どうして、ほんたうの事が云《い》はれませう。
何《なに》も知らない子供達は
今日《けふ》の天長節を喜んでゐました。
中にも光《ひかる》は
明日《あす》の自分の誕生日を
毎年《まいとし》のやうに、気持よく、
弟や妹達と祝ふ積《つも》りでゐます。
子供達のみづみづしい顔を
二つのちやぶ台の四方《しはう》に見ながら、
ああ、私達ふたおやは
冷たい夕飯《ゆふはん》を頂きました。
もう私達は顛覆《てんぷく》するでせう、
隠して来たぼろを出すでせう、
体裁を云《い》つてゐられないでせう、
ほんたうに親子拾何人が餓《かつ》ゑるでせう。
全《まつた》くです、私達を
再び立て直す日が来ました。
恥と[#「恥と」は底本では「耻と」]、自殺と、狂気とにすれすれになつて、
私達を試みる
赤裸裸の、極寒《ごくかん》の、
氷のなかの日が来ました。
[#地から4字上げ](一九一七年十二月作)
真珠貝
真珠の貝は常に泣く。
人こそ知らね、大海《おほうみ》は
風吹かぬ日も浪《なみ》立てば、
浪《なみ》に揺られて貝の身の
処《ところ》さだめず伏しまろび、
千尋《ちひろ》の底に常に泣く。
まして、たまたま目に見えぬ
小さき砂の貝に入《い》り
浪《なみ》に揺らるる度《たび》ごとに
敏《さと》く優《やさ》しき身を刺せば、
避くる由《よし》なき苦しさに
貝は悶《もだ
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