晶子詩篇全集
與謝野晶子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)如何《いか》なれば
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)百|燭《しよく》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「虫+奚」、第3水準1−91−59]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)中風症《よい/\》
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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美濃部民子夫人に献ず
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自序
美濃部民子様
わたくしは今年の秋の初に、少しの暇を得ましたので、明治卅三年から最近までに作りました自分の詩の草稿を整理し、其中から四百廿壱篇を撰んで此の一冊にまとめました。かうしてまとめて置けば、他日わたくしの子どもたちが何かの底から見附け出し、母の生活の記録の断片として読んでくれるかも知れないくらゐに考へてゐましたのですが、幸なことに、実業之日本社の御厚意に由り、このやうに印刷して下さることになりました。
ついては、奥様、この一冊を奥様に捧げさせて頂くことを、何とぞお許し下さいまし。
奥様は久しい以前から御自身の園にお手づからお作りになつてゐる薔薇の花を、毎年春から冬へかけて、お手づからお採りになつては屡わたくしに贈つて下さいます。お女中に持たせて来て頂くばかりで無く、郊外からのお帰りに、その花のみづみづしい間にと思召して、御自身でわざわざお立寄り下さることさへ度度であるのに、わたくしは何時も何時も感激して居ます。わたくしは奥様のお優しいお心の花であり匂ひであるその薔薇の花に、この十年の間、どれだけ励まされ、どれだけ和らげられてゐるか知れません。何時も何時もかたじけないことだと喜んで居ます。
この一冊は、決して奥様のお優しいお心に酬い得るもので無く、奥様から頂くいろいろの秀れた美くしい薔薇の花に比べ得るものでも無いのですが、唯だわたくしの一生に、折にふれて心から歌ひたくて、真面目にわたくしの感動を打出したものであること、全く純個人的な、普遍性の乏しい、勝手気儘な詩ですけれども、わたくしと云ふ素人の手作りである点だけが奥様の薔薇と似てゐることに由つて、この光も香もない一冊をお受け下さいまし。
永い年月に草稿が失はれたので是れに収め得なかつたもの、また意識して省いたものが併せて二百篇もあらうと思ひます。今日までの作を総べて整理して一冊にしたと云ふ意味で「全集」の名を附けました。制作の年代が既に自分にも分らなくなつてゐるものが多いので、ほぼ似寄つた心情のものを類聚して篇を分ちました。統一の無いのはわたくしの心の姿として御覧を願ひます。
山下新太郎先生が装幀のお筆を執つて下さいましたことは、奥様も、他の友人達も、一般の読者達も、共に喜んで下さいますことと思ひます。
[#地から3字上げ]與謝野晶子
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装幀 山下新太郎先生
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晶子詩篇全集目次
自序
雲片片(小曲五十六篇)
[#ここから2段組]
草と人
鼠
賀川豐彦さん
人に答へて
晩秋の草
書斎
我友
恋
己が路
また人に
車の跡
繋縛
帰途
拍子木
或夜
堀口大學さんの詩
岬
静浦
牡丹
弓
秋思
園中
人知らず
飛行船
柳
易者に
甥
花を見上げて
我家の四男
正月
唯一の問
秋の朝
秋の心
今宵の心
我歌
憎む
悲しければ
緋目高
涼夜
卑怯
水楼にて
批評
過ぎし日
春風
或人の扇に
桃の花
杯
日和山
春草
二月の雨
秋の柳
冬のたそがれ
惜しき頸輪
思は長し
蝶
欲望
[#ここで段組終わり]
小鳥の巣(押韻小曲五十九篇)
夢と現実(雑詩四十篇)
[#ここから2段組]
明日
肖像[#「肖像」は底本では「肖像画」]
読後
紅い夢
アウギユスト
産室の夜明
颱風
冬が始まる
木下杢太郎さんの顔
母ごころ
我子等よ
親として
正月
大きな黒い手
絵師よ
戦争
歌はどうして作る
新しい人人
黒猫
曲馬の馬
夜の声
自問自答
我が泣く日
伊香保の街
市に住む木魂
M氏に
詩に就
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