東の
我等女子に代る
平和の使節。
君の過ぎ給ふところ、
如何に愛と微笑の
美くしき花咲かん。
淑《しと》やかにつつましき夫人は
語らざれども、その徳
おのづから人に及ばん。
ああ旅順にして、日露の役に
死して還らぬ夫君《ふくん》の霊、
茲に君を招き給ふか。
行き給へ、吉本夫人、
生きて平和に尽すも
偏《ひとへ》に大御代の為めなり。
まして君は歌びと、
新しき滿洲の感激に
みこころ如何に躍らん。
我れは祝ふ、吉本夫人、
非常時は君を起たしむ、
非常時は君を送る。
月
月、まどかな月、
永遠の処女のやうな月、
昭和八年の中秋の月。
昨夜《ゆうべ》まで三夜《みよ》続けて見た月は
山に、湖上に、海に、
美くしい自然と
友情のなかで眺めた月、
そなた[#「そなた」に傍点]を観た私からは
百首の歌が流れて出た。
今夜の私は沈黙して居よう、
沈黙してそなた[#「そなた」に傍点]に聴かう。
そなた[#「そなた」に傍点]は雲を出て踊り、
そなた[#「そなた」に傍点]は雲に入つて歌ふ。
木犀の香はそなた[#「そなた」に傍点]の息、
竹のそよぎはそなた[#「そなた」に傍点]の衣ずれ。
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