冬の日にも自然は歌つてゐる。

裸の木の上には青空、
それがまろく野のはてにまで
お納戸いろを垂れてゐる。
二階へ上がつたら
富士もまつ白に光つてゐよう。

風が少しある、
感じやすい竹が挨拶をしてゐる。
あたたかい室内で
硝子ごしに見ると、
その風も春風のなごやかさである。

苛酷な冬の自然にも
こんな平和な一日がある。
師走の忙しさは嵐の中のやうだ、
それは人間のこと、
自然は今、息を入れて休んでゐる。


  霧氷

富士山の上の霧氷、
それを写真で見て喜んでゐる。
美くしいことは解る、
それがどんな[#「どんな」に傍点]に寒い世界の消息かは
登山者以外には解らない。
あなたにわたしの歌が解りますつて、
さうでせうか、さうでせうか。


  来客

彼れは感歎家にして慷慨家、
形容詞ばかりで生きてゐる。
また他の一人の彼れは計画家、
建築の経験を持たない製図師。
忙しい師走の半ばに
二人のお相手は出来ない、
わたしは失礼して為事をする。
お客同志でゆつくり[#「ゆつくり」に傍点]とお話し下さい。


  暖炉

灯をつけない深夜の室に、
燃え残つたストオヴが深紅に光る。
ストオヴ
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