いみじきすごき稲妻おこる
陰陽のあるらむ、わが一つなる心にも。
   ○
紅《くれなゐ》の血ながして、
みな死ぬべきを閉ぢこめぬ。
チヤアルス王の、倫敦塔に似る心かな。
   ○
寒さをも、熱をも知らず、
ある人に云ふ如きこと、聞くは厭、
横恋慕などうち明けよかし。
   ○
おほよそは、そのむかし、
二十ばかりの若き日に、
過ちて入りたる門をわが家とする。
   ○
わが心、尼院の中に、尼達に、
かくまはれあればすべなし。
思ふとも、思はるるとも、全《また》くすべなし。
   ○
かの人が七人の子を見に帰れば、
かの人に、
老は俄におそひいたりぬ。
   ○
自らがちかひけるやう。
檀那様と生き、
檀那様と死に、
檀那様の知らぬまに、
唯ひとつ、何かしてまし。
   ○
別れて憂愁に居ぬ。
はねらるるとも、くれなゐに、
血のとばじな。あぢきなの身。
   ○
得たるもの忽にして擲つは
財宝すらもここちよし
まして、まして、何と云はむ。
   ○
大空の雪のごと、浮きたる心と、
流れの浄き心と
はらからなるをわれのみぞ知る。
   ○
いつの日か、いかなる時か、
しのびてわれに恩売り
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