あだし人のそを罵るも正直に罵るなれば亦美くし。
〔無題〕
彩色硝子の高き窓を半ひらき、
引きしぼりたる印度更紗の窓紗の下に
下町の煙突の煤煙を見下しつつ、
小やかな軽き朝飯のあとに若き貴女の弾くピヤノの一曲、
東京の二月の空は曇れども、
若き貴女の心に緑さす
明るき若葉の夏の色、恋の色生の色。
〔無題〕
たそがれに似るうす明り、
二月の庭の木を透きて、
赤むらさきのびろうどの
異国模様に触れるとき。
たそがれに似るうす明り、
赤むらさきのびろうどの
窓掛に凭《もた》るわが肌を
夢となりつゝ繞《めぐ》るとき。
たそがれに似るうす明り、
朝湯あがりの身を斜《はす》に、
軽く項を抱きかゝへ、
つく/″\人の恋しさよ。
〔無題〕
昨日も今日も啼き渋る
若い気だてのうぐひす。
一こゑ渋るも恋のため、
二こゑ渋るも…………
おゝ、わたしに似たうぐひす。
〔無題〕
東京の正月の或日、
うれしくも恋しき人の手紙着けり。
「今わが船の行くは北緯一度の海、
白金《プラチナ》色の月死せる如く頭の真上に懸り、
甲板に立てる人皆|陰影《かげ》を曳かず。」
「印度
前へ
次へ
全116ページ中23ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
与謝野 晶子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング