えるのは、
まさしく蚊帳の麻の目よ。
私はこれを楽しんで、
見てゐながらも思ひます。
かうした蚊帳の中にある、
蜜柑畑のほの白い、
沙子《すなご》の中で人しれず、
生命《いのち》終つて横たはる、
朝が私にあることを。


  すすき

穂の薄をば手に提げて、
盆の仏の帰る絵を、
身の毛のよだつ思ひして、
見たは幼い日のわたし。

そのすすきより細い手も、
それより白い骨もまた、
恐しい気のせずなりて、
十三日の待たるるよ。

巴里の街の下に見し、
カタコンブなる鈍色《にびいろ》の、
人骨などはよそのこと、
あの絵に描いた白い人。

[#改ページ]

 昭和十三年


  二十六日

霜月の末の落日、
常磐木の十《と》もと二十《はた》もと、
その他《た》には三四の紅葉、
中目黒、驪山《りざん》の荘よ、
広縁に畳敷かれて、
古柱、紫檀めきたり。
この入日、平家の船を
西海に照らせる如く、
我れを射て、いといと赤し
心をば云ふにあらねど、
風なくて肩の寒かり、
君逝きし二十六日。


  丹羽夫人に

伊弉諾《いざなぎ》と伊弉冉《いざなみ》の神、
導きて、うら若草の、
妹と背の君の入るてふ、
前へ 次へ
全116ページ中108ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
与謝野 晶子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング