不思議なぞありません。
硝子のまだ半液体である時、
其れが火より熱かつたとて、
天女の指は焼けません。
人の身体《からだ》の中の心臓の、
かうした場合などにも、
触れて見ない手ではありません。
細きベツド
我が閨《ねや》の傍へのベツド。
内なるは君にあらずて、
藤子こそ眠りたりけれ。
この事実、いつよりとなく
覚えたり、夢裏《むり》のたましひ。
或る夜半の悪夢のうちに、
救ひをば我れの求めて、
声を上げ、君を呼びてき。
その寝ねて在《い》ますベツドは、
遥かにも離れてありき。
今もなほ、目にこそ見ゆれ。
君が寝て在ませるベツド、
細長く縁深かりき、
夢にわれ箱と悟らず、
ましてこれ柩なりとは。
空しき客席
観客となり君が居る、
舞台であれば独白の、
長い台詞《せりふ》は云へませう。
どんな身振りも出来ませう。
重き病の悲みも、
訴へるよな、云ふやうな、
時と所を持たざれば、
感じぬことと変りなし。
たつた一句の捨台詞
わが引込みに云ふことも
無駄な舞台の上に描く、
黒い小さい疑問符を。
強き友
海を渡らん我が友へ、
別れを述べに行きし時、
客室《サ
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