がらん[#「がらん」に傍点]としたる空《くう》のなか、
前に尾を振る白い犬、
これを眺めてもう七日《なぬか》。
×
裾野の路に、たくたくと、
二町はなれた森にまで
秋にひびかす靴のおと。
わたしは森の端に出で、
呼びたけれども、旅の人。
×
秋の日ざしに照り透り、
蔦の紅葉《もみぢ》がさつと散る。
どれも身軽な紅い鳥。
今日は深山《みやま》の崖となる、
見上げる壁に一しきり。
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既に云ひ得ず、今の史家、
未来の史家も誤らう、
時を隔てて何知らう。
真の批判が世にあるか、
自負する人は寒からう。
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ハンドバツクを持つ振も
みなが凜凜しく、大事らし、
そして鋪道を西ひがし。
霜に曇つたこの朝も
職ある娘はいそぎ足。
×
霜ふらぬ間《ま》に園の薔薇、
乏しけれども秋の薔薇、
純情の薔薇、夢の薔薇、
これを摘まずば寂しかろ、
べにと薄黄に香る薔薇。
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泣かずともよい高い木も、
露が置くとて泣いてゐる、
霜が降るとて泣いてゐる。
泣くのが無理か、真昼にも
蔭に日を見ぬ草の蔓。
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どこをどう[#「どう」に傍点]して来たことか、
ひまある人は振り返る
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