あじわ》いながら、その不幸を他の幸福に換える立派な工夫を実行していられるのです。教育界ばかりでなく、あらゆる階級の婦人に、現に意に満ちた結婚を求めて得られない所から、他の職能で独立自営を計り、併《あわ》せて父母兄弟を養って行こうとしている人たちの多いのは、私の同情に堪えない所であると共に、時代に処する覚悟と勇気との健気《けなげ》な事を甚だ心強く存じます。皆が皆結婚に由《よっ》て幸福の得られない現代に、「女は結婚すべきものだ」というような役に立たない旧式な概論に動《うごか》される事なく、結婚もしよう、しかしそれが不可能なら、他にいくらも女子の天分を発揮すべき文明の職能がある。結婚のみが自分の全部でないという見識から、境遇と自分の個性とに順じて思い思いの進路を開き、いろいろに立派な変り物の婦人が多く出て来られる事を望みます。男子の方から申してもそういう意志の強い、役に立つ、独立自営の婦人が出て来れば、足手まといが少くなって都合が宜しくはありませんか。
[#下げて、地より1字あきで](『婦人の鑑』一九一一年四月)



底本:「与謝野晶子評論集」岩波文庫、岩波書店
   1985(昭和60)
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