をえず寛容を与える者であるが、それには勿論いろいろの条件を附けたい。第一、公衆の目に触れないように場末の地を限って手軽な待合《まちあい》営業を黙認し、その営業の不徳を自覚せしめて、出来るだけ目立たぬよう隠密にそれを営む心掛を徹底させることが必要である。
私娼とてもこれを奨励するのでなく、むしろ出来るだけ減少せしめようとするのであるから、政府が売淫周旋業者が悪辣《あくらつ》な手段を用いて純良な処女を欺《あざむ》き、その意志に反した売淫を行わしめるような行為を防止し、それを犯す者は厳しく罰することも必要である。今日はどん底まで糊口《ここう》に窮して売淫する悲惨な女は尠《すくな》い。太抵は労働を避けて些細《ささい》な物質的|贅沢《ぜいたく》の中に遊惰《ゆうだ》な日送りをしようとすることが動機であるから、政府は世の社会改良家、教育者、慈善家と共に、それらの無智な女に勧めて何らかの正しい労働に服させるような方法を講じ、出来るだけ下層階級の女の堕落を防ぐべきである。
娼婦に対する検黴《けんばい》制度の実行が公娼には完全に行れ、私娼には不十分であるという理由はなさそうに想われる。私娼がもし監督の
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