処《ここ》との懸隔が余りに甚しいので、初めの廊下を曲つて更にまた折れた所の廊下がまた長く、然《しか》も庭の向うにはまだ幾棟かの建物があるのですから、それを見まして、心細いやうな一種の悲哀を覚えまして、
「私もう帰ります。帰りたくなつて来ました。」
と私は云ひました。
「何故《なぜ》。」
と加賀田さんは失望したやうに云ひました。
「何故でも帰りたくなつたの。」
「私の部屋がまだ遠いからだすか。帰りには彼方《あちら》から行けば直ぐ玄関へ出られます。」
と云はれましたけれど、私は、
「また来ますから今日は帰らせて下さいな。」
と云ひ通して、何千石かの酒の造られる匂ひの何処《どこ》からとなくする加賀田さんの家《うち》を出て来ました。それから間《ま》もなしに、加賀田さんが私の家へ来てくれたことがありました。私はそれまで外の方《かた》の処へ行つたことも尠《すくな》い代りに友達を家に迎へたのもこれが初めでした。ですからこんな時にはどうして遊ぶものか、友達も自分も面白いやうにするのはどうするのかが私の経験のないことで解らないのです。街の中の狭い家ですから庭などは四|坪《つぼ》か五坪位よりもないのですか
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