御門主
與謝野晶子

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)先刻《さつき》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)目鼻|立《だち》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)なよ/\とした身体《からだ》を
−−

 先刻《さつき》まで改札の柵の傍に置いてあつた写真器は裏側の出札口の前に移されて、フロツクコートの男が相変らず黒い切《きれ》を被《かつ》いだり、レンズを覗《のぞ》いたりして居る。その傍に中年老年の僧侶が法衣《はふえ》の上から種々《さまざま》の美しい袈裟を掛けて三十五六人立つて居る。羽織袴の服装《いでたち》の紳士もそれと同じ数程居て、フロツクコートを着た人も混つて、口々に汽車が後《おく》れたから、汽車が定刻より遅く着くさうだからと云つて居る。この様を場内の旅客《りよかく》が珍らしさうに立つて見て居る中に、桃割《もヽわれ》に結つて花車《きやしや》ななよ/\とした身体《からだ》を伴《つ》れの二十四五の質素《
次へ
全8ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
与謝野 晶子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング