しそ》な風をした束髪の女の身体《からだ》にもたれるやうにして、右の手ではもう一人の伴れの二十一二の束髪の女の袂《たもと》の先を持つて、
『沢山《たくさん》な坊さんだわね。二十人坊主、三十人坊主。ほ、ほ、ほ。』
 と笑つて居る女がある。
『えヽ、さうですね。』
 後《うしろ》に居た年上の女はかう云つて点頭《うなづ》いた。目鼻|立《だち》は十人並|勝《すぐ》れて整ふて居るが寂しい顔であるから、水晶の中から出て来たやうな顔をして明るい色の着物を着た伴《つれ》の女に比べると、花の傍に丸太の柱が立《たつ》て居る程に見られるのであつた。近い処に居る人の目は屡《しば/\》桃|割《われ》の女に注がれる。絵はがきになつて居る赤坂の某《なにがし》だらうなどヽ云つて居る者もあつた。
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『山崎さん、二三日前の新聞に出て居た本願寺の田鶴子姫《たづこひめ》とか云ふ方がいらつしやるのぢやないのでせうか。』
[#ここで字下げ終わり]
 青味のある顔に幾つも黒子《ほくろ》のある前の方の女が後《うしろ》の束髪の女にかう云つた。
『さうよ、さうよ、あの人よきつと。』
 と云つて、
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