對に姑が嫁に加へたとしたら、日本の裁判官は中根氏の舊夫人を罰したやうに八年と云ふ永い期間の體刑を其姑に宣告せられるでせうか。私は恐らく私の考へとは反對に、嫁を罰する場合には七分、姑を罰する場合には三分と云ふ割合で裁斷されることであらうと想ひます。私がかやうな想像をするのは法律もまた其保守的な性質から姑の味方であるらしく考へられるからです。もつとも日本の法律は近く作られたものだけに、世界で最も進歩した新思想をも含んで居ると云ふことであり、また近頃の法官達には政界、教育界、宗教界などよりも聰明正義の士に富んで居ると云ふことですから、保守思想に侫した判決を下されることなく、少くとも嫁の場合と同じだけの刑罰を加へられるかも知れませんが、若し其樣な判決が下されたとして、一般の姑達はどう考へるでせう。彼等は自分達を反省し悔悟する教訓としてそれに對するでせうか。私は恐らく善惡の觀念の固定して居る一般の姑達は、其中心に嫁が惡いから姑が狂的に刄物沙汰を引起したので、姑がそんなに罰せられる譯はないと云ふ不滿を感じることであらうと想ひます。私はさう云ふ無智な姑根性から脱することも、婦人が自己を解放して公明な
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