立の生活をも尊重したいと思っている。結婚して一家を営むに至った我子夫婦は既に分封した自治独立の一団であるから、私は全然その生活に干渉したくない。在来の父母舅姑は我子夫婦から財養し孝養されることを望んだのであるが、私は我子が独立し得るまでの教育にはあくまでも力を竭《つく》す覚悟でいる代りに、我子からその報償を得ようとは毛頭考えていない。まだ私は家系、家風などという物も少しも尊重すべき物と思っていないのであるから、子供らが何処へ行って自治の生活を始めてもそれを祝福する外に何の註文もない。独立するに至った我子には絶対に干渉しないつもりであるから親の名を以て威圧がましいことをしないのは勿論である。私は今から幼い子供たちに各自の意見を親の前で大胆に述べる習慣を附けている。それは私と子供たちとの思想が他日相反する時があっても互に気兼《きがね》せずに研究し合って理解することの出来るようにと思うからである。夫婦、親子、朋友《ほうゆう》の愛も初めの中は感情一偏の愛であるが、少し年齢が長《た》けて行った後に誠実と知性との理解が伴わない愛は危い。感情と知性と誠実がすっきり透き徹《とお》るように融《と》け合え
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