源氏物語
手習
紫式部
與謝野晶子訳

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)法《のり》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)この春|初瀬《はせ》へ

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から3字上げ]
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[#地から3字上げ]ほど近き法《のり》の御山《みやま》をたのみたる女郎花《をみなへし》
[#地から3字上げ]かと見ゆるなりけれ    (晶子)

 そのころ比叡《ひえ》の横川《よかわ》に某僧都《なにがしそうず》といって人格の高い僧があった。八十を越えた母と五十くらいの妹を持っていた。この親子の尼君が昔かけた願果たしに大和《やまと》の初瀬《はせ》へ参詣《さんけい》した。僧都は親しくてよい弟子《でし》としている阿闍梨《あじゃり》を付き添わせてやったのであって、仏像、経巻の供養を初瀬では行なわせた。そのほかにも功徳のことを多くして帰る途中の奈良坂《ならざか》という山越えをしたころから大尼君のほうが病気になった。このままで京へまで伴ってはどんなことになろうもしれぬと、一行の人々は心配して宇治の知った人の家へ一日とまっ
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