では世話になった、世話をしたというくらいのことでいつまでも親しみ合っていて、それが穏当に見える、こうした高い貴族の中では例のないことであるなどと誹謗《ひぼう》するかもしれぬという遠慮もあり、宮が続いてこの交情に疑いを持っておいでになるのが今になっていよいよ煩わしく思われもする心から、自然うとうとしいふうを見せていくようになったのであるが、薫のほうではそれにもかかわらず、好意を持ち続けた。宮も多情な御性質がわざわいして情けなく夫人をお思わせになるようなことも時々はまじるが若君がかわいく成長してくるのを御覧になっては、他の人から自分の子は生まれないかもしれぬと思召し、夫人を尊重あそばすようになり、隔てのない妻としてはだれよりもお愛しになるため、以前よりは少し物思いをすることの少ない日を中の君は送っていた。
正月の元日の過ぎたあとで宮は二条の院へ来ておいでになって、歳《とし》の一つ加わった若君をそばへ置き愛しておいでになった。午《ひる》ごろであるが、小さい童女が緑の薄様《うすよう》の手紙の大きい形のと、小さい髭籠《ひげかご》を小松につけたのと、また別の立文《たてぶみ》の手紙とを持ち、むぞう
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