い」
 と言った。どんな血族にあたる人なのであろう、よく似た様子をしているではないかと宮は比べてお思いになるのであった。気品があって艶《えん》なところはあちらがまさっていた。この人はただ可憐《かれん》で、こまごまとしたところに美が満ちているのである。たとえ欠点があっても、あれほど興味を持って捜し当てたいとお希《ねが》いになった人であれば、その人をお見つけになった以上あとへお退《ひ》きになるはずもない御気性であって、まして残る隈《くま》もなく御覧になるのは、まれな美貌《びぼう》の持ち主なのであったから、どんなにもしてこれが自分のものになる工夫《くふう》はないであろうかと無我夢中になっておしまいになった。物詣《ものもう》でに行く前夜であるらしい、親の家というものもあるらしい、今ここでこの人を得ないでまた逢いうる機会は望めない、実行はもう今夜に限られている、どうすればよいかと宮はお思いになりながら、なおじっとのぞいておいでになると、右近が、
「眠くなりましたよ。昨晩はとうとう徹夜をしてしまったのですもの、明日早く起きてもこれだけは縫えましょう。どんなに急いでお迎いが京を出て来ましても、八、九
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