者二、三人、それから内記、乳母《めのと》の子で蔵人《くろうど》から五位になった若い男と、特に親しい者だけをお選びになり、大将は今日明日宇治へ行くことはないというころを、薫の家の内部の消息のよくわかる内記に聞いてお置きになってお出かけになる兵部卿の宮であったが、覚えのある路《みち》をおとりになるにつけても昔がお思い出されになり、あやしいまでに何事も打ちあけ合う友情を持ち、自分を伴って恋人の家へ入れてくれたほどの好意を知らず顔に、その人へ済まぬ心を起こして同じ宇治へ行くと、悩ましい気持ちを覚えておいでになった。京の中でも、浮気《うわき》な方とは申せ、極端な微行は経験しておいでにならないのであるが、簡単なお身なりをあそばして、大部分はお馬でおいでになることになっていた。お気持ちも無気味で、恐ろしくさえおありになるのであるが、好奇心の人一倍多い方であったから、山路《やまみち》を深く進んでおいでになったころには、こうして行ってその人を見ることができたらどんなにうれしいであろう、のぞくだけで自分の行ったことを知らせる方法がなかったら物足らぬ気がするであろうとお思いになるとまた胸が鳴った。法性寺のあ
前へ 次へ
全101ページ中15ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
与謝野 晶子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング