どういう関係で親しいのであろうとお思われになり、薫と心を合わせて夫人があくまで隠そうとしていることがねたましく、いささか不快なことにもお思われになった。
 それ以来|兵部卿《ひょうぶきょう》の宮は宇治の女のことばかりがお思われになった。宮中の賭弓《のりゆみ》、内宴などが終わるとおひまになって、一月の除目《じもく》などという普通人の夢中になって奔走してまわることには何のかかわりもお持ちにならないのであるから、微行で宇治へ行ってみることをどう実現さすべきであるかとばかり腐心しておいでになった。大内記は除目に得たい官があってどうかして宮の御歓心を得ておこうと夜昼心を使っているころであったのを、宮はまた好意をお見せになって、おそばの用に始終お使いになり、ある時、
「どんな困難なことでも私の言うことに骨を折ってくれるだろうか」
 とお言いだしになった。内記はかしこまって頭を下げていた。
「この間の話の大将の宇治に置いてある人ね、それは以前に私の情人だった女で、ある時から行くえ不明になっているのが、大将に愛されてどこかへ囲われているという話をこの間聞いてね、確かにその人かどうかをほかに分明にする手
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