の心苦しさをやや強く書いて言って来たのであったから、
「何かわけがあることでございましょう。冷淡に断わっておしまいになってはいけません。ああした劣った人から生まれた方が姉妹《きょうだい》の中に混じっておいでになることは、どこにも例のあることでございます。先方が無情だと思いますような処置をおとりになってはなりません」
 などと夫人に取りなして、
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それではお居間から西のほうに目だたぬ場所をこしらえましたから、いいお座敷ではありませんがごしんぼうをなさいますならしばらくお預かりになろうとおっしゃいます。
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 と昔の朋輩《ほうばい》の中将へ返事をした。その人はうれしく思ってさっそく姫君を二条の院の夫人へ預ける決心をした。姫君も姉君と親しみたくてならぬ心であったから、かえって少将の問題が機会を作ったのを喜んだ。
 常陸守は婿の少将の三日の夜の儀式をどんなふうに派手《はで》に行なおうかと思案をしたのであるが、高尚《こうしょう》なことは何もわからぬ男であったから、ただ荒い東国産の絹を無数に投げ出し、酒肴《しゅこう》も座が狭くなるほどにも運び出すような歓
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