して、御機嫌《ごきげん》はどうかと始終気にいたしながらお尋ねも申し上げませんでした。あの方に謹慎の日がまわってまいりまして、しばらくどこかへ所を変えさせたいと思うのでございますが、そっとおそばへまいらせていただいていてはどんなものでしょう。人目につかぬお部屋《へや》が拝借できますれば非常にうれしいことと存じます。つまらぬ私には十分の保護もできませんで、あの方を苦しい立場に置きますことのしばしばある悲しい世でございますのに、お助け所と考えられますのはまずあなた様だけでございます。
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 泣きながら書かれたものであるこの手紙を、中の君は哀れと思ったが、父宮が、あくまで子とあそばさなかった人を、父や姉の異議の聞きようのない世になって、自分が姉妹《きょうだい》としてつきあうのも気のとがめることであるが、また自分がかまわずにおいた結果、低い女房勤めなどをするようになることも心苦しいことに思われるであろう、自分の計らい方一つから姉妹がちりぢりになってしまうことも父宮のためにお気の毒なことであると思い悩まれるのであった。常陸《ひたち》夫人は大輔《たゆう》のところへも姫君について
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