繕い立てていたから、そう醜いふうの娘とは見えなかった。今が十五、六で、背丈《せたけ》が低く肥《ふと》った、きれいな髪の持ち主で、小袿《こうちぎ》の丈《たけ》と同じほどの髪のすそはふさやかであった。その髪をことさら賞美して撫でまわしている守であった。
「家内がほかの計画を立てていた人をわざわざ実子の婿にせずともいいとは思ったが、あまりに人物がりっぱなもので、われもわれもと婿に取りたがるというのを聞いて、よそへ取られてしまうのは残念だったから」
 と、あの仲人《なこうど》の口車に乗せられた守の言っているのも愚かしい限りであった。
 左近少将もこの派手《はで》な舅《しゅうと》ぶりに満足して、夫人のほうもやむをえず同意したことと解釈をし、以前に約束のしてあった夜から来始めた。守の妻と姫君の乳母はあさましくこれをながめていたのであった。ひがんだようには見られまいと夫人は世話に手を貸そうとも思っていたが、それをするのも気が進まないままに、二条の院の中の君へまず手紙を送ることにした。
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用事がございませんで手紙を差し上げますのもなれなれしくいたしすぎることになり、失礼かと存じま
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