の話をお定めになるでしょう。私はただあなたのためにこの御良縁をお勧めするのですよ」
仲人が出まかせなよいことずくめを言い続けるのを、驚くほど田舎《いなか》めいた心になっている守であったから、うれしそうに笑顔《えがお》をして聞いていた。
「現在の御収入の少ないことなどはお話しになる要はない。私が控えている以上は、頭の上へまでもささげて大事にしますよ。決して足らぬ思いはさせません。いつまでもお尽くしすることができずに中途で私が亡《な》くなることがあっても、遺産の領地は一つだってあの娘以外に与えるものではありませんから、御安心くだすっていいのです。子供はおおぜいおりますが、あの娘にだけ私は特別な愛情を持っているのです。真心をもって愛してくださる方であれば、大臣の位置を得たく思いになり、うんと運動費を使いたくおなりになった時にも事は欠かせますまい。現在の帝がそれほど愛護される方では、もうそれで十分で、私などが手を出す必要もないくらいのものでしょう。帝の御後見以外のものは少将さんのためにも私の女の子のためにもたいした結果になりますまい」
守《かみ》がおおげさに承諾の意を表したために、仲人はう
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