ない人にばかり未練を持ち、新しい妻の内親王に愛情を持たないことなどはあまり書くのがお気の毒である。こんな変人を帝が特にお愛しになって、婿にまではあそばされるはずはないのである。公人としての才能が完全なものであったのであろうと見ておくよりしかたがない。
 これほどの幼い人をはばからず見せてくれた夫人の好意もうれしくて、平生以上にこまやかに話をしているうちに日が暮れたため、他で夜の刻をふかしてはならぬ境遇になったことも苦しく思い、薫は歎息を洩《も》らしながら帰って行った。
「なんというよいにおいでしょう。『折りつれば袖《そで》こそにほへ梅の花』というように、鶯《うぐいす》もかぎつけて来るかもしれませんね」
 などと騒いでいる女房もあった。
 夏になると御所から三条の宮は方角|塞《ふさ》がりになるために、四月の朔日《ついたち》の、まだ春と夏の節分の来ない間に女二の宮を薫は自邸へお迎えすることにした。
 その前日に帝は藤壺《ふじつぼ》へおいでになって、藤花《とうか》の宴をあそばされた。南の庇《ひさし》の間の御簾《みす》を上げて御座の椅子《いす》が立てられてあった。これは帝のお催しで宮が御主催に
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