ことになったであろう、富のない自分らは世の中から何につけても尊重されていくものではないらしいとまた思うことによって姉君がどこまでも情に負けず結婚はせまいとした心持ちのえらさが思われた。
薫が若君をぜひ見せてほしいと言っているのを聞いて、恥ずかしくは思いながら、この人に隔て心を持つようには取られたくない、無理な恋を受け入れぬと恨まれる以外のことで、この人の感情は害したくないと中の君は思い、自身では何とも返辞をせずに、乳母《めのと》に抱かせた若君を御簾《みす》の外へ出して見せさせた。いうまでもなく醜い子であるはずはない。驚くほど色が白く、美しくて、高い声を立てて笑《え》んでみせる若君を見て薫は、これが自分の子であったならと思い、うらやましい気のしたというのは、この人の心も人間生活に離れにくくなったのであろうか。しかしこの人は、死んだ恋人が普通に自分の妻になっていて、こうした人を形見に残しておいてくれたならばと思うのであって、自身が名誉な結婚をしたと見られている女二の宮から早く生まれる子があればよいなどとは夢にも考えないというのはあまりにも変わった人である。こんなふうに死んで取り返しようの
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