むであろうと思われる。召使いどもにあがめられる生活はしていないが、山里であったから世間に遠くて、人に馴《な》れていない中の君は、地からわいたような良人《おっと》がただ恥ずかしい人とより思われないのであって、自分の言うことなどは田舎《いなか》風に聞こえることばかりであろうと思って、ちょっとした宮へのお返辞もできかねた。しかしながら二女王を比べて言えば、貴女らしい才の美しいひらめきなどはこの人のほうに多いのである。
三日にあたる夜は餠《もち》を新夫婦に供するものであると女房たちが言うため、そうした祝いもすることかと総角の姫君は思い、自身の居間でそれを作らせているのであったが、勝手がよくわからなかった。自分が年長者らしくこんなことを扱うのも、人が何と思って見ることかとはばかられる心から、赤らめている顔が非常に美しかった。姉心というのか、おおように気高《けだか》い性格でいて、妹の女王のためには何かと優しいこまごまとした世話もする姫君であった。源中納言から、
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今夜はまいって、雑用のお手つだいもいたしたく思うのですが、先夜の宿直《とのい》にお貸しくださいました所が所ですか
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