めてささげる山の男もあった。阿闍梨の寺から炭などを贈って来た時に、
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年々のことになっておりますのが、ただ今になりまして中絶させますのは寂しいことですから。
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という挨拶《あいさつ》があった。冬季の僧たちのために、必ず毎年綿入れの衣服類を宮が寺へ納められたのを思い出して、女王もそれらの品々を使いに託した。荷を運んで来た僧や子供侍が向かいの山の寺へ上がって行く姿が見え隠れに山荘から数えられた。雪の深く積もった日であった。泣く泣く姫君は縁側の近くへ出て見送っていたのである。宮はたとい出家をあそばされても、生きてさえおいでになればこんなふうに使いが常に往来《ゆきき》することによって自分らは慰められたであろう、どんなに心細い日を送っても、また父君にお逢《あ》いのできる日はあったはずであるなどと二人は語り合って、大姫君、
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君なくて岩のかけ道絶えしより松の雪をも何とかは見る
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中の君、
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奥山の松葉に積もる雪とだに消えにし人を思はましかば
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消え
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